2026.09.08

金利3%時代における中小企業の利益と不利益

 日本経済は、長期間続いた超低金利から「金利のある時代」へ移行しつつある。
ここでいう金利3%時代とは、政策金利が3%になるという意味ではなく、中小企業の一般的な借入金利が3%前後に達する状況を想定する。金利上昇は中小企業に一律の不利益を与えるものではないが、財務内容や事業構造によって企業間の格差を拡大させる可能性が高い。

最大の不利益は、借入金の支払利息が増加し、利益と資金繰りを直接圧迫することである。例えば、借入金1 億円の企業で金利が1%から3%に上昇すれば、年間利息は100 万円から300 万円となり、利益が200 万円減少する。
 営業利益率が5%の企業がこの200 万円を売上増加だけで補うには、単純計算で4,000 万円の追加売上が必要となる。特に、設備投資額が大きい製造業、運送業、建設業、宿泊業や、コロナ禍の借入金を多く残す企業への影響は深刻である。

 変動金利借入れの多い企業では、既存借入れの返済負担も増える。また、金融機関は返済能力を厳しく審査するようになるため、赤字企業、債務超過企業、後継者不在企業は新規融資や借換えが難しくなる。金利上昇によって住宅、自動車、設備などの需要が減少すれば、関連する中小企業は売上面でも打撃を受ける。原材料費、人件費、社会保険料の上昇に利息負担まで重なり、価格転嫁ができない下請企業では、黒字であっても現金が不足する「黒字倒産」の危険が高まる。

 一方、利益も存在する。現預金を多く持つ無借金企業では、預金や債券の受取利息が増え、資金運用による収益を得られる。退職金や修繕費など将来の支出に備えて資金を蓄積してきた企業には有利である。

また、金利上昇が過度な円安を抑える方向に働けば、輸入原材料、燃料、機械設備などの価格上昇が緩和される可能性がある。輸入依存度の高い企業にとっては、借入金利の増加を上回る仕入負担の軽減もあり得る。

 さらに、金利3%は経営の質を選別する働きを持つ。低金利下では、採算性の低い投資や、返済計画の甘い借入れも継続できた。しかし、金利が上がれば、投資利益率が借入金利を上回るかを慎重に判断せざるを得ない。結果として、不要な設備、過剰在庫、不採算事業を整理し、付加価値や生産性を重視する経営へ転換する契機となる。財務体質の強い企業にとっては、廃業企業の顧客、人材、設備、技術を事業承継やM&A によって引き継ぎ、事業を拡大する機会にもなる。

 したがって、金利3%時代に必要なのは、単なる借入金の削減ではない。企業は、借入金を固定金利と変動金利、短期資金と長期資金に区分し、金利がさらに1%上昇した場合の利益と資金繰りを試算すべきである。同時に、余剰在庫の削減、遊休資産の売却、価格転嫁、設備投資の選別を進める必要がある。金利3%は、借金依存の企業には大きな逆風となるが、現預金、収益力、価格決定力を持つ企業には成長の機会となる。結局、金利上昇そのものよりも、「金利を払ってなお利益を生み出せる経営であるか」が、今後の中小企業の存続を決めるのである。

小牧社労士事務所*経営者コラム「金利3%時代における中小企業の利益と不利益」