2018.03.10

同一労働同一賃金について

1月末に政府は「働き方改革」の柱の一つである「同一労働同一賃金」の中小企業への導入を2020年4月から2021年へと、1年延期した。「同一労働同一賃金」とは同じ仕事をしている人にはパートや有期契約等の雇用形態に関係なく同じ賃金を支払いましょうというものだ。具体的にガイドラインでは①基本給②賞与③福利厚生④その他(教育訓練等)の4つの分野について規定している。例えば賞与でいうと正社員には職務内容や貢献等に関わらずに支給している賞与を、非正規社員には支給しない場合は不合理な格差として問題となる。

今や非正規労働者は労働者全体の4割を超えそのうちの約1割が世帯主もしくは単身者である。「同一労働同一賃金」はそういった非正規労働者と正規労働者の経済格差を解消するとともに、賃上げにより消費を底上げし経済を活性化するのが目的だ。

しかし日本で導入するには極めてハードルが高いように思われる。

この「同一労働同一賃金」はヨーロッパ、特にドイツ、フランスを手本にしているが、欧州では「この仕事をしてもらいましょう」もしくは「このポストに就いてもらいます」と職務を明確にして採用する。

対する日本は、職務に就くというよりかは企業の一員として採用され、年功序列賃金と終身雇用制度のもとおおむね50歳まで給与は少しずつ上昇するのが一般的だ。

加えて欧州は日本の企業別労働組合と違い、産業別に労働組合が組織されているのが主流の為、同じ産業、職種内で給与水準が決められている。その為、労働時間の長短や雇用形態の違いがあっても、同じ賃金規定を用いる事が容易で、非正規の正規に対する賃金格差も8割から9割と少ない。そもそも働き方や労働環境に対する文化に違う。そしてその文化にあうように日本的な賃金制度、評価制度、人材教育が形成されてきたからだ。

とはいえ「同一労働同一賃金」導入にむけ法律も整備される為、企業は対応を迫られる。もし上記のように非正規労働者にも賞与の支払いが義務付けられるような事があれば、企業の総額人件費は上昇する。

「同一労働同一賃金」を正規と非正規の格差を無くすのを目的とした人事制度を構築するのではなく、雇用形態や性別に関係なく従業員が活躍できることを目的とした人事制度を目指すという発想に転換しなくてはいけない。