2026.01.08

責任なき積極財政がもたらす構造的リスク

 政府は「責任ある積極財政」を掲げ、教育無償化をはじめとする新たな支出拡大策を次々に打ち出している。しかし、その「責任」に不可欠な財源確保の道筋は明確に示されていない。野党においても、減税や給付といった選挙対策的な主張が目立ち、どの財源で賄うのかという議論はほぼ皆無である。結果として、財政規律なき支出拡大が円安を助長し、輸入物価や消費者物価の上昇を通じて、真の意味での物価高対策とはなっていない。
 円安は確かに輸出比率の高い大企業にとっては追い風であり、為替差益による業績改善や株価上昇、さらには消費税や法人税の増収といった形で政府財政にも一時的な恩恵をもたらす。しかし、輸出を持たない中堅・中小企業や一般国民にとっては、原材料やエネルギー価格の上昇として重くのしかかる。政府が円安基調を容認しているように見える構図は、経済の二極化を一層進めている。
 こうした中、2025年12月には10年物国債利回りが1.9%まで上昇した。国の借金が1333兆円に達する状況下で金利が上がれば、新規国債や借換国債の利払い負担は急増する。実際、2026年度概算予算では、122兆円のうち約26.5%にあたる32兆円超が国債費に充てられる見込みであり、予算編成そのものが立ち行かなくなる懸念が現実味を帯びている。
 さらに、金利上昇は国債や社債の価格下落を招き、それらを保有する銀行、保険会社、年金基金、企業年金の運用損失を拡大させる。これは企業経営や将来の年金給付にも直接影響する重大な問題である。
 一方で、出生数は年間70万人を割り込み、年金受給者は約4000万人に達しているにもかかわらず、世代間扶養を前提とする年金制度を今後どう維持するのかについて、政府も与野党も具体策を示していない。また、上下水道をはじめとするインフラ老朽化対策も先送りされたままである。これらは国内の建設業活性化のみならず、老朽化対策技術の海外展開という成長機会にもなり得る分野である。
 さらに国防費増額が進む一方で、全国各地で深刻化する熊被害に対する抜本策は講じられていない。熊被害は人命に関わるだけでなく、商店街の衰退や教育現場への影響など、地域経済と日常生活を直撃している。国防以前に、日々の生活圏で国民の命を守る政策こそが最優先されるべきである。
 今求められているのは、理念先行の積極財政ではなく、財源・金利・人口動態・インフラ・安全保障を一体で捉えた現実的で責任ある政策である。事業主にとっても、これらの構造問題は経営環境を左右する重大な前提条件であり、政治の責任が厳しく問われていると考える。
小牧社労士事務所労務ニュース
小牧社労士事務所*経営者コラム「責任なき積極財政がもたらす構造的リスク」