2022.10.10

賃金引上げ(昇給)?

 最低賃金の引上げが10月から実施された。30円~33円の上げ幅である。東京で1072円京都968円大阪1023円兵庫960円と1000円越え又は迫る勢いである。昨年はコロナの影響もあり引き上げを見送ったが経済へ舵を切った岸田政権は従前の政策事項を実施した。最低賃金が引き上げられることによりアルバイトや契約期間社員等の非正規社員の賃金に大きく影響し採用後間もない非正規社員の賃金処遇にも影響するのが実態ではないだろうか。具体的には非正規として昨年採用した契約社員の賃金は昨年の最低賃金だとすると当然賃金引上げ対象となる。月額にすると5400円程度引き上げなければ最低賃金法違反となってしまう。一方で1年間経験を積んだ非正規社員とこの10月に採用する非正規社員との同等の賃金額処遇で良いのだろうかという疑問がわく。しかし企業として営業利益が確保され企業の維持発展が期待されているのなら引き上げるべきだし可能であろう。一方労働分配率の高い企業で利益確保の難しい状況だと引上げは厳しい。更に10月から101人以上の従業員を雇用する企業での非正規雇用従業員の社会保険の強制加入が義務付けられた。要件はあるものの「❶月収8万8千円以上❷二か月を超える雇用見込み❸学生でない者」以上三点で相当の人が対象となる。社会保険料等の企業負担は増すばかりである。従業側から賃金上昇を検証すると5人以上働く事業所調査で7か月連続の上昇で1.8%増となっている事が新聞に掲載されているが、一方で物価変動を考慮すると7月では前年同月比1.3%減少しているとの事である。つまり物価上昇に賃金上昇が追い付いていないので実質可処分所得は減少し財布の中身は厳しい状況になってきている。

 企業側は営業利益を確保するため人材確保と人件費の抑制のために採用時に当たり非正規社員の労働条件の一つに労働日の特定を行わない(変動制)シフト制を採用する会社が多い。つまり「労働日は1週4日以上でシフト制による」というものである。 流動性人材確保のためには時間単価を引き上げて最低賃金より高額な賃金で募集する。ここには大きな落とし穴が発生する。賃金額が相当と思い採用された非正規社員は週4日働き1か月の生活の計画を立てるのであるが、シフトはあいまいで週4日入れない場合も発生する。つまり繁忙・閑散により週や日によりシフト制を理由に変動することになる。労基法15条で「使用者は・・・労働者に対して賃金・労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」となっているが、明示事項が膨大になる場合には始業終業、休日の考え方を示すだけで足りるとされた当該15条解釈通達がありあいまいとなっている。しかし最近従業員側からの民事上の訴えが多くなり裁判上の判決も出てきている。

 原則は労働条件についてあいまいにせず契約を結ぶことが求められると考える。人件費は経営資源の中で最も大きな経費だ。人件費額をとらえる一方で人的資本ととらえ付加価値の高い採用を求められる領域に入ったと考える。人手不足は恒常化するでしょうが企業価値に類する人的資本の確保に勤めて頂きたいと考える。

有限会社レイバー経営者コラム「不景気」
有限会社レイバー経営者コラム「 賃金引上げ(昇給)? 」