2023.10.10

106万円の壁

 昨今、年収の壁103万円・106万円・130万円と新聞紙上を賑わしこれらの壁の対策として政府は助成金をばら撒く施策を実施するようです。この壁とは就労することで賃金得たことにより損をすると云うものだ。働き損した。つまり実質手取り収入が減額してしまうという事だ。この壁には所得税法上の103万円の扶養控除の壁、社会保険法上の106万円・130万円が存在する。要するに税金が控除される壁と社会保険料負担が無い壁の事である。

 扶養控除って何故できたのだろうか。1920年第1次世界大戦後の恐慌により、勤労所得控除金額の拡大と共に扶養控除が導入された。主として働く者の扶養者の数による軽減であった。配偶者控除は1961年自営業者と給与所得者の税負担差を小さくする理屈で、サラリーマン負担減の為であった。同年に国民年金制度がスタートして国民皆年金となった。ここに自営業者の妻は夫婦で自営業を営んでいるという考え方があった。サラリーマン世帯は夫婦でも稼得能力者は1人しかし自営業者は2人という考え方があった。よって年金も自営業者の主人も妻も強制的に国民年金に加入しなければならないとされた。1980年代に入り共働きが急増しパート問題が表面化し、1986年には国民年金第3号被保険者制度がスタートした。サラリーマンの妻は国民年金保険料を支払わずして老後に年金が受け取れる制度です。背景にはサラリーマン妻が離婚したとき無年金となるのを阻止する目論見であった。1987年には円高不況により配偶者特別控除が導入された。これらの制度はその時代背景と共に政策実施されたものではある。社会保険料も税金の一種です。これらの制度設計のベースは主物(稼得能力者=主人(男性))を中心とした考え方です。では従物とは(無収入者=妻(女性)です。主物が荷物を沢山抱えると大変なので、国に納める税は軽くする。離婚時の分割協議で主人の年金減額を抑えるように無拠出の3号制度とも捉えること出来る。つまり日本社会は男性社会であるという象徴ともいえる。これ等の制度を抜本的に見直さなければならない時代環境(共働き・女性の社会進出・男女雇用機会均等・男女公平教育機会の均等・国際化情報化の進展)にあるにも関わらず、この制度を維持し106万円の壁対策に企業が負担となる50万円程度1回切り現金給付するという小手先の施策に唖然とするほかはない。今日の施策は時代背景を汲取り政策を作り上げる行為は希少で、旧態依然とした制度に現金給付のバラマキで、明日を夢見る創造心を砕くようなことばかりのような気がしてならない。確りと制度設計していたなら少子高齢化対応も労働力人口減少問題も対策があったのではなかろうか。喫緊の課題として2024年問題・タクシー運転手人手不足・建設労働者不足の従事者は高齢者で、コロナ化で働かずして給与を貰い年金貰い環境が戻った時にはやる気が失せて生活不足金のみ稼得するというように心が折れてしまった様に感じる。現金給付は個人だけでなく法人のやる気も阻害し、給付元に集まる蟻が如く甘い汁だけに頼ろうとする。然るに今、時代環境に即した、たしかな制度設計が必要ではなかろうか。

小牧社労士事務所*経営者セミナー「新リストラ時代」
有限会社レイバーコラム「106万円の壁」