2024.04.10

相続登記の義務化?

 2024年3月下旬、ある市民の方から相談があった。聞くと、「私の妻の実家で母親は84歳で昨年父親が亡くなり一人で暮らしている。そこに突然、市の役人が訪れ相続登記を行ってもらわないと罰金10万円がかかります。早期に手続して下さい」と言って帰っていったという。老人一人暮らしの母親は困惑し何か悪いことでもしているのか?人様に迷惑かけているのかと手の震えを隠せなかったという。又ある町民から「私の父親の実家の兄弟が昨年亡くなり相続人はその兄弟の子供たちであったと理解していた。処が子供たちは皆、相続権放棄の手続きを行い、時点相続人は私の父親とのことで、早期に相続登記をしてください。そうでなければ罰金がかかりますと行政マンが言い残し去ったという。」狭い地域で同じ内容の事象が発生している。其々の相談者はなぜこんなことを言われなければならないのか?どのように対処すればよいのか?不安に駆られた。

 さて何故このような事象が発生しているのか?原因は土地建物の相続登記の義務化が2024年4月1日から施行されたものによるのです。改正相続法(民法改正)2021年改正で2024年4月1日施行「土地建物の相続登記を義務化」及び「相続人申告登記制度」がスタートしました。内容は『相続開始から3年以内に誰がどれだけ相続するかの登記が必要となりました。登記懈怠は10万円以下の過料に処す』とのこと。しかし何故、市役所の職員や町役場の職員が独居老人等を訪問してここまで啓蒙活動を行うのか?現実を考えると相続が発生し相続税等の申告は終わっていたとしても、土地建物の登記までは、古民家や耕作放棄地のような農地迄登記費用が掛かるので敢えて行っていないケースは全国には珍しくないはず。一方で固定資産税は地方税です。登記がなされれば所有権者が明確になり課税徴収が楽になると同時に税収が増えるということなのかと思料した。

 財政の厳しい地方自治体の担当者は未徴収無きよう対応するのはもっともであるが、その前に独居で暮らす老人に対し、事の意味を丁寧に説明してその行っていただく手続きについて分かりやすくサポートするのが大切な事ではないかと感じた。地方だからこそ顔が見える分こういった個別訪問啓蒙活動ができるが、都心部では無理ではないか。とすれば正直者が損をするとは言わないが、地方の衰退が引き起こしている弱者負担増の典型ではなかろうか。

有限会社レイバー経営者コラム
有限会社レイバー経営者コラム「相続登記の義務化?」